
■ 結論
『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』(知念実希人・朗読:高岡千紘)は、舞台が病院ではなく長野県の洋館・九頭龍邸という、シリーズでは珍しいクローズドサークル型の長編。推理カルテ『密室のパラノイア』で語られた何気ない一言が、本作で別の意味を持って戻ってきました。洋館の建物を想像しながら聴けたこともあり、AutoCAD作業との相性はこれまでの巻と比べても特に高かったです。
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■ 作業との相性
AutoCADでの作業中に聴きました。1.3倍速で聴いています。
クローズドサークルで登場人物が限られているため、把握した後は作業中でも関係を見失いにくかったです。本作では登場人物を把握した後は、人物と場所をセットで覚えやすく、作業中でも筋を追いやすかったです。伏線回収が多い作品は聴き直しが必要になることもありますが、本作は医学知識で解決する構成のため丁寧な説明があり、すんなりと聴いていられました。
小鳥遊いじりがなく、掛け合いも適度にあるため、シリーズを通して聴いている人にも楽しめる内容でした。専門知識がなくても解決の説明で置いていかれにくく、これまでの巻と比べても、作業との相性が特に高い一冊でした。
■ Audibleで聴く
再生時間は7時間48分。配信日は2025年2月28日。Audibleで本作の配信を確認できます。無料体験の条件は変わることがあるため、最新の内容は登録画面でご確認ください。
前作から引き続き高岡千紘が朗読しています。クローズドサークルもので登場人物が限られているため、声の聞き分けに迷うことはありませんでした。ひとつ気になった点として、「耳がおかしくなってしまったかのような沈黙」という同じ表現が何度も出てきており、少し気になる場面もありました。
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■ 作品について
知念実希人による天久鷹央シリーズの、Audible配信順では第17作(事件カルテとしては第10作)。天久鷹央シリーズ10周年記念の書き下ろし新作です。長野県の山奥に聳え立つ洋館・九頭龍邸に招かれた天久鷹央。招いたのは鷹央の大学時代の友人・燐火(りんか)でした。その夫で計算機工学の天才・九頭龍零心朗(くずりゅう れいしろう)の交通事故の真相究明を依頼されますが、捜査を開始するとすぐに殺人事件が発生し、事態は混迷を極めていきます。連鎖する事件の末、最後に容疑をかけられたのは、なんと鷹央自身でした。
シリーズは2025年1月にTVアニメ化、同年4月にテレビ朝日系でドラマ化(橋本環奈主演)されています。
■ 主な登場人物
- 天久鷹央(あめく たかお):統括診断部部長。天才女医。今作では事件の容疑をかけられ、絶体絶命の窮地に立たされる。大学時代の友人・燐火との関係から、過去の一面が垣間見える。
- 小鳥遊優(たかなし ゆう):内科医。鷹央の相棒で語り手。
- 鴻ノ池舞(こうのいけ まい):研修医。今作では出番が少なめだが、いざという場面での「ラジャです」という短い返事に頼もしさが光る。
- 燐火(りんか):鷹央の大学時代の友人。九頭龍零心朗の妻。
- 九頭龍零心朗(くずりゅう れいしろう):計算機工学の天才。燐火の夫。事故で植物状態となり、鷹央に依頼を残す。
■ 「密室のパラノイア」の一言が、ここで戻ってきた
推理カルテ『密室のパラノイア』の中、閃光の事件の場面で、鷹央が「付き合ったことはないんだからな、男とは」という台詞を口にしていました。当時は何気ない一言として聴いていましたが、本作でその意味が解き明かされます。
具体的な中身は伏せますが、あの一言がまさかここでつながるとは思っていませんでした。推理カルテ側の作品で流していた台詞が、事件カルテ側の本作で回収される——シリーズをまたいだ伏線に驚かされました。
配信順に聴き進めてきたからこそ気づける仕掛けです。天久鷹央シリーズは「推理カルテ」と「事件カルテ」という2系統がありますが、両方を順番に聴いてきた人だけが受け取れる楽しみが、こういう形であることを実感しました。
■ 洋館を想像しながら聴いた、クローズドサークルの手応え
物語の主な舞台は、長野県の山奥にある洋館・九頭龍邸です。シリーズをここまで聴いてきた中では、初めてクローズドサークルらしさを強く感じる構成でした。
洋館という舞台を、施工図を描く仕事柄、頭の中で建物の構造を想像しながら聴いていました。部屋の配置や人物の移動を思い浮かべる楽しみは、病院を舞台にした作品では得られない体験でした。
事件カルテはもともと作業相性が良い印象がありましたが、舞台が洋館に絞られたことで、いつも以上に人物と場所を一体で覚えやすく、作業をしながら聴くスタイルとの相性がさらに高まった一冊でした。
■ 読む順番/シリーズ情報
天久鷹央シリーズの、Audible配信順では第17作(事件カルテ第10作)にあたります。前作「絶対零度のテロル」に続けて配信されています。推理カルテ『密室のパラノイア』で語られていた鷹央の何気ない一言が、ここで別の意味を持って戻ってきます。シリーズを聴き続けてきた人ほど、この伏線回収を楽しめる一冊です。
天久鷹央シリーズを順番に聴きたい人へ
Audibleで聴ける20作品の順番、「推理カルテ」と「事件カルテ」の違い、時系列の補足をまとめ記事で整理しています。
■ 文字でも読みたい人へ
実業之日本社から『猛毒のプリズン 天久鷹央の事件カルテ』として刊行されています(2024年10月4日発売)。伏線や人物関係を文字で整理しながら読みたい場合は、文字版の方が追いやすいかもしれません。洋館の緊張感や登場人物の声を楽しみたい人は、Audible版がおすすめです。
■ こんな人に
事件カルテシリーズを続けて聴きたい人に向いています。クローズドサークルや館ものの雰囲気が好きな人、王道の舞台設定を生かしたミステリーを楽しみたい人、鷹央の過去や人間関係に興味があるシリーズ読者には特に合う一冊です。
病院を舞台にした医療ミステリーの空気を求めている人、自分で根拠まで推理して謎を解きたい人には少し方向性が違います。鴻ノ池の活躍を中心に楽しみたい人も、今作は出番が少なめであることを留意してください。