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『神秘のセラピスト 天久鷹央の推理カルテ 完全版』Audibleレビュー|後半は耳を持っていかれる。医療と神秘の対立が前面に出る第5巻

結論:知念実希人『神秘のセラピスト 天久鷹央の推理カルテ 完全版』(朗読:高岡千紘)は、医療と神秘の対立が前面に出たシリーズ第5巻。会話劇としての聴きやすさは前作までと変わらないが、白血病・骨髄移植・医療不信が絡む後半では少し耳を持っていかれる場面があった。詐欺師・あまねの活躍が小気味よく、AutoCAD作業との相性も引き続き高い。

■ はじめに

知念実希人による医療ミステリーシリーズの第5巻・完全版です。ナレーターは引き続き高岡千紘。前作までと同じナレーターで、医療ミステリーとしての空気にも合っています。完全版には書き下ろし掌編「詐欺師と小鳥遊」が追加収録されており、加筆修正も施されています。

■ 今日の耳読シーン

AutoCADでの作業中に聴きました。前半は会話劇中心で手が動きやすく、作業のテンポと合っていました。後半は白血病・骨髄移植・医療不信が絡む展開になり、少し耳を持っていかれる感覚がありましたが、作業を止めるほどではなかったです。

■ 『神秘のセラピスト 天久鷹央の推理カルテ 完全版』あらすじ

医療行為の枠を超えた「神秘的な治療」を求める患者たちが次々と登場します。鍼灸師から「若返り」の治療を受け、外見が二十歳以上変わった女性。白血病が再発し、骨髄移植でしか助かる見込みがない中で、聖痕を持つ「預言者」の言葉にすがる少女とその母親——医療不信と奇蹟の狭間で、鷹央が「神秘」に潜む真実を明らかにしていきます。

■ 完全版と通常版の違い

新潮社より配信された通常版に加筆修正を施し、書き下ろし掌編「詐欺師と小鳥遊」を追加収録した完全版です。詐欺師・あまねが本編とは別の角度で描かれており、シリーズファンには読み応えがあります。Audibleでの配信もこの完全版となっています。

■ 読む順番/シリーズ情報

天久鷹央シリーズの第5巻です。単体でも話は追えますが、鷹央・小鳥遊・鴻ノ池の関係性や、診断型ミステリーとしての聴き方は1〜4巻で培われます。1巻から順に聴いてきた人ほど、本作の楽しみ方が定まった状態で臨めます。なお本作では、清和総合病院での密室事件で鴻ノ池が疑われたという過去の出来事に複数回言及があります。この事件はシリーズ別巻『幻影の手術室』に収録されており、シリーズを追っている人は合わせて確認すると流れがつかみやすいです。

■ 主な登場人物

  • 天久鷹央(あめく たかお):統括診断部部長。天才女医。今作では空気を読めない一面より、思いやりや子供との相性の良さが前面に出る。
  • 小鳥遊優(たかなし ゆう):内科医・鷹央の相棒。語り手。
  • 鴻ノ池舞(こうのいけ まい):研修医。今作では過去の密室事件で疑いをかけられた経緯に言及がある。
  • 羽村里奈(はむら りな):白血病が再発した少女。骨髄移植が必要とされるが、母親が医療不信から移植を拒否する。
  • 杠阿麻音(ゆずりは あまね):自称霊能力者の詐欺師。今作では小気味よい活躍を見せる脇役。

■ ナレーションの印象

5作通じて高岡千紘が担当しており、安定感があります。今作で印象的だったのは、謎解き場面に登場するバチカンの使者のキャラクターです。片言の外国語を交えた独特の演じ方が面白く、思わずニヤついてしまいました。紙の本では気づけない、Audibleならではの聴きどころです。1.3倍速でも聴きやすさは変わらずです。

■ 作業との相性

※記号は「作業中の聴きやすさ」の目安です(作品の面白さ評価ではありません)。

  • 変換・資料整理など:◎ 前半は会話劇中心で手が動きやすく、作業のテンポと合っていました。あまねの活躍場面も小気味よく聴き続けられました。
  • 修正・割付検討など:◎ 作業の手が止まることなく聴き続けられました。鷹央の思いやりある場面が自然に耳に入ってきます。
  • 詳細・納まり検討など:○ 後半の白血病・骨髄移植・医療不信が絡む展開では、少し意識を引っ張られる場面がありました。集中が必要な局面では耳が先に行く感覚がありました。

■ 気になったところ

  • 『幻影の手術室』への言及が気になる:本作では清和総合病院での密室事件と鴻ノ池への疑いが複数回登場します。この事件はシリーズ別巻『幻影の手術室』に収録されており、本作を聴き進めるうちに気になってくる一点です。

■ こんな人には合わない

  • 医療不信・骨髄移植など重いテーマが苦手な人
  • 宗教的・神秘的な要素が絡む展開に違和感を覚える人
  • 本格ミステリーのトリックに強い納得感を求める人
  • じっくり物語を味わいたい人、静かに読み進めるタイプの読書が好きな人

■ 心に残ったポイント

  • 「現在の自分なりの美」という問いかけ
    若返りをテーマにした話の中で、若さだけでなく人生経験からにじみ出る美の存在が描かれています。作業中に流しながらも、ふと手が止まりそうになる場面でした。
  • 鷹央の思いやりが見える場面
    空気を読めない言動が目立つ鷹央ですが、今作では子供との相性の良さや、相手への思いやりが自然な形で描かれています。シリーズを通じて鷹央への印象が変わってきます。
  • Audibleならではの声の演じ分け
    片言の外国語を交えた独特の演じ方が作品に軽さを与えており、Audibleで聴く価値がある場面のひとつです。紙の本では気づけない聴きどころです。

■ こんな人におすすめ

  • 1〜4巻を聴いてシリーズを続けたい人
  • 医療と神秘の対立というテーマに興味がある人
  • 詐欺師キャラクターの活躍が好きな人
  • 軽快な掛け合いを楽しみながら耳読したい人

■ 総評

知念実希人『神秘のセラピスト 天久鷹央の推理カルテ 完全版』は、医療と神秘の対立が前面に出た一作です。前作までより鷹央の思いやりある側面が描かれ、キャラクターへの親近感が増してきます。高岡千紘のナレーションは特定キャラクターの演じ分けが面白く、Audibleで聴く意味が実感できる場面がありました。後半は少し耳を持っていかれますが、AutoCAD作業との相性は引き続き高く、作業を邪魔しにくい一冊です。

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