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『贖罪の奏鳴曲』Audibleレビュー|作業中も離脱しにくい。ダークヒーローの原点を知る一作

結論:中山七里『贖罪の奏鳴曲』(朗読:池添朋文)は、池添朋文さんの落ち着いた朗読で作業しながらでも追いやすく、御子柴礼司シリーズを聴くなら最初に押さえたい一作です。

■ はじめに

中山七里著『贖罪の奏鳴曲(しょくざいのソナタ)』は、弁護士・御子柴礼司シリーズの第1作です。ジャンルはリーガルサスペンス。著者初のリーガルサスペンス作品でもあります。朗読は池添朋文さんが担当し、Audibleで配信中です。シリーズは全6作あり、本作がその起点となります。

著者の中山七里は岐阜県出身。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。「どんでん返しの帝王」の異名を持ちます。同県出身者として、個人的に応援したくなる作家のひとりです。

実はこの作品、私がはじめて聴いたAudibleです。本を読みたいけれど時間が取れない、とずっと悩んでいました。仕事をしながら耳で本を読む。その感覚をこの一冊で知りました。内容が面白く、朗読も上手で、気づけば作業が終わっていました。Audibleを続けようと思ったのは、この作品があったからです。

■ 今日の耳読シーン

施工図の変換・資料整理から修正・割付検討の作業中に通して聴きました。1.3倍速で再生し、最後まで作業から離脱することはありませんでした。

■ 本の概要

被告に多額の報酬を要求することで知られる弁護士・御子柴礼司。世間からは悪徳弁護士と呼ばれる一方、圧倒的不利な状況でも無罪や執行猶予をもぎ取る辣腕を持ちます。物語は御子柴が死体を遺棄する場面から始まります。やがて保険金殺人の国選弁護を引き受けた御子柴と、強請り屋の死を追う刑事の捜査が交差していきます。中山七里が「どんでん返しの帝王」と呼ばれる理由が、終盤の法廷で明確になる構成です。

■ 読む順番/シリーズ情報

御子柴礼司シリーズの読む順番は以下の通りです。

  1. 贖罪の奏鳴曲(ソナタ)← 本作
  2. 追憶の夜想曲(ノクターン)
  3. 恩讐の鎮魂曲(レクイエム)
  4. 悪徳の輪舞曲(ロンド)
  5. 復讐の協奏曲(コンチェルト)
  6. 殺戮の狂詩曲(ラプソディ)

本作で御子柴の過去・出自・弁護士になった動機が語られます。第2作以降はその前提の上に成り立つため、順番通りに聴くことを強く推奨します。

■ 主な登場人物

  • 御子柴礼司:主人公。高額報酬で知られる敏腕弁護士。少年期に凶悪事件を起こした過去を持ち、改名して司法試験に合格した。悪辣に見えて弱者を守る一面を持つダークヒーロー。
  • 東條美津子:保険金殺人の被告。御子柴が国選弁護人として担当する。

■ ナレーションの印象

池添朋文さんの声は落ち着いており、リーガルサスペンスというジャンルとよく合っています。男女の聞き分けも明瞭で、登場人物が多い本作でも混乱しにくいです。作業の邪魔になるような過剰な抑揚はなく、BGM的に流しながら聴けます。ト書き部分で文ごとに短い間が入る癖があります。1.3倍速にすると気にならなくなりますが、等倍で聴くと止まったと感じる場面があるかもしれません。終盤の法廷シーンでは会話劇が中心になり、この間が自然に消えてナレーションが物語のテンポに乗ってくる印象でした。

■ 作業との相性

※記号は「作業中の聴きやすさ」の目安です(作品の面白さ評価ではありません)。

  • 変換・資料整理など:◎ 池添朋文さんの落ち着いた朗読が作業リズムを乱さない。御子柴を軸に話が進むため、離脱しにくい。
  • 修正・割付検討など:◎ 中程度の判断作業でも内容を追いながら進められた。御子柴が常に中心にいるため人物関係を見失いにくい。
  • 詳細・納まり検討など:○ 終盤の法廷シーンはテンポが上がるため、複雑な作業との並走は手が止まることがある。

■ こんな人には合わない

  • 朗読の間に敏感な人。ト書き部分の短い停止が気になると、等倍速では集中が続きにくい。
  • 主人公に共感や好感を求める人。御子柴は序盤から死体を遺棄しており、感情移入しにくい設定から始まる。
  • 伏線や展開を聴き逃したくない人。作業しながらだと終盤のどんでん返しを追いきれない場合がある。

■ 心に残ったポイント

  • 「やりたいようにやらせるのが思いやり」
    障碍者との関わり方について御子柴が語る場面です。同情や過保護ではなく、その人の意志を尊重することが本当の思いやりだという視点は、聴き終えた後も残りました。
  • 偽悪と贖罪の構造
    悪徳弁護士として振る舞いながら、弱者を救う行動を取る御子柴の姿。毀誉褒貶を気にしない生き方が、読後感をすっきりさせています。
  • 終盤の法廷での反転
    それまでのト書きの間が詰まり、会話劇として一気に流れ込む構成になっています。専門用語に頼らず緊迫感を作る法廷シーンは、作業中でも自然と没入できました。

■ こんな人におすすめ

  • 法廷ミステリを作業中に聴きたい人。
  • 御子柴礼司シリーズを読み始めたい人。第1作から読むことで、シリーズ全体の厚みが変わります。
  • ダークヒーローものが好きな人。勧善懲悪ではなく、罪と贖罪の間で動く主人公に興味がある人に向いています。

■ 総評

中山七里『贖罪の奏鳴曲』は、御子柴礼司というキャラクターの全容が描かれるシリーズの起点です。作業しながらでも最後まで追える構成で、Audibleとの相性も良い一作です。シリーズを聴くなら、ここから始めることを推奨します。

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