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『魔女は甦る』Audibleレビュー|猟奇描写が続き作業は難しめ。麻薬とカラスが絡む社会派警察ミステリ

結論:中山七里『魔女は甦る』(朗読:野口晃)は、麻薬「ヒート」とカラスをめぐる社会派警察ミステリです。冒頭からの猟奇的な描写が続き作業との相性は全体的に難しめですが、槇畑を軸に話が進むため離脱はしにくく、最後まで緊迫感が続く一作です。

■ はじめに

中山七里著『魔女は甦る』は、2011年に幻冬舎より刊行された作品です。朗読は野口晃さんが担当し、再生時間は12時間20分です。

本作は著者のデビュー前に「このミステリーがすごい!」大賞の最終選考まで残った作品で、中山七里作品の中でも初期の一作にあたります。刑事犬養隼人シリーズや渡瀬シリーズに登場する渡瀬・古手川和也が本作にも名前を連ねており、中山七里作品を横断して聴いている人には世界観のつながりを楽しめます。

関連作に『ヒートアップ』があります。著者は続編としていませんが、同じ麻薬「ヒート」を軸にしたスピンオフ的な一作です。どちらから聴いても完結しますが、本作を先に聴いておくと背景をより深く楽しめます。

■ 今日の耳読シーン

施工図の作業中に聴きました。バラバラ遺体やカラスの群れの描写が多く、仕事の手が止まる場面が続きました。槇畑の落ち着いた捜査の進め方が物語の軸になっているため離脱することはありませんでしたが、今まで聴いた中山七里作品の中で作業との相性は最も難しめでした。

■ 『魔女は甦る』のあらすじ

埼玉県所沢市の沼地で、元薬物研究員・桐生隆のバラバラ遺体が発見されます。埼玉県警の槇畑啓介が捜査を開始すると、被害者がドイツ系製薬企業スタンバーク社の研究員だったことが判明します。捜査を進めるうちに、生物の攻撃本能を異常増大させる麻薬「ヒート」の存在が浮かび上がります。

ヒートに侵されたカラスの群れが人を襲うという異常事態が各地で発生し、事件は予想外の方向へと展開します。2011年刊行という時代背景もあり、カラスが社会問題として取り上げられていた頃の空気感が作品に滲んでいます。桐生の幼少期をめぐる排他的な田舎の描写など、社会の歪みを映す場面も多く、単純な警察ミステリの枠に収まらない重さがあります。

■ 主な登場人物

  • 槇畑啓介(まきはた けいすけ):埼玉県警の刑事で本作の主人公。捜査員歴12年。上司の渡瀬から厚く信頼される優秀な捜査官で、バラバラ遺体やカラスの群れという異常な事件でも冷静に核心を追い続けます。この落ち着きが物語の軸になっており、聴き手が離脱しにくい構造を作っています。
  • 渡瀬:槇畑の上司。刑事犬養隼人シリーズや渡瀬シリーズにも登場する中山七里作品横断キャラクターです。
  • 古手川和也:捜査一課に配属されたばかりの刑事。刑事犬養隼人シリーズにも登場する横断キャラクターで、本作では若手刑事としての姿が見られます。
  • 毬村美里(まりむら みさと):薬科大学3年生。被害者・桐生の恋人で、事件の真相に独自に近づいていく人物です。
  • 宮條貢平(くじょう こうへい):麻薬取締りの急先鋒。強烈な過去を持ち、作中で印象的な存在感を示します。

■ ナレーションの印象

野口晃さんの語り口は穏やかで優しい印象です。警察ミステリというより大衆小説や医療ものに近い雰囲気があり、猟奇的な描写が幾分和らいで聴こえる効果がありました。作品の強烈な内容と語り口の落ち着きが対照的で、それが独特の空気感を生んでいます。

■ 作業との相性

※記号は「作業中の聴きやすさ」の目安です(作品の面白さ評価ではありません)。

  • 変換・資料整理など:○ 槇畑を中心に話が進むため離脱はしにくいですが、バラバラ遺体やカラスの描写が出てくる場面では気持ちが持っていかれます。軽作業でも手が止まることがありました。
  • 修正・割付検討など:○ 内容を追いながら作業できますが、宮條の過去など感情的に重いシーンが続く場面では集中が途切れます。
  • 詳細・納まり検討など:△ カラスの群れが人を襲う場面や宮條の過去が明かされる場面では手が止まります。集中が必要な作業との組み合わせは難しいです。

■ 気になったところ

  • 美里のキャラクターに戸惑った:キャバクラで学費を稼ぐ真面目な女子大生という設定だったはずが、物語が進むにつれてハードボイルドなバディのような動きをするようになります。作業中に聴いていると細かな描写を聴き落とすこともあり、キャラクターの変化についていきにくい場面がありました。

■ こんな人には合わない

  • 冒頭からの猟奇的な描写が苦手な人。バラバラ遺体の発見から始まるため、早々に離脱する可能性があります。
  • カラスや動物の死骸描写が苦手な人。カラスが重要な要素として繰り返し登場し、不快な映像が浮かぶ場面が続きます。
  • 作業中にすっきり聴き通したい人。猟奇的な場面が多く、作業との相性は全体的に難しめです。

■ 心に残ったポイント

  • 宮條の過去
    麻薬取締りの急先鋒として登場する宮條の過去が明かされる場面は、手が止まるほど心が揺れました。物語として必要な場面ですが、聴いていてつらさが残ります。強烈なキャラクターだっただけに、物語の中での存在感が印象的でした。
  • カラスと時代の空気
    2011年刊行という背景もあり、カラスが街でゴミを散らかしたり人にいたずらしたりする社会問題が記憶に重なりました。ヒートに侵されたカラスの群れの描写は緊迫感がある一方で、不快な映像も浮かびます。
  • 桐生の幼少期と排他性
    桐生が育った田舎の排他的な空気の描写が印象に残りました。外国人の増加や多様性の受け入れが叫ばれる今と比べると、時代の変化を感じさせる場面でした。

■ こんな人におすすめ

  • 中山七里の初期作品に関心がある人。デビュー前の最終選考作として、著者の原点ともいえる一作です。
  • 渡瀬や古手川など、中山七里作品を横断して追っている人。刑事犬養隼人シリーズとは異なる顔を持つ両キャラクターが楽しめます。
  • 猟奇的な描写を含むハードなミステリが好きな人。重い場面に耐性がある人には、緊迫感のある展開が最後まで続きます。

■ 総評

『魔女は甦る』は、麻薬「ヒート」とカラスという異色の組み合わせを軸にした社会派警察ミステリです。槇畑の冷静な視点が物語の軸になっているため離脱はしにくいですが、冒頭から続く猟奇的な描写が作業との相性を難しくしています。中山七里の初期作品として著者の世界観の原型を感じられる一作で、作業中に聴くなら猟奇的な描写に耐性がある日を選ぶことをおすすめします。

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