
結論:テーマは重い。けれど言葉は難しくない。
気づくと、作業の手を動かしたまま、心だけが引っぱられていました。
■ はじめに
葉真中 顕『ロスト・ケア』をAudibleで耳読しました。
著者:葉真中 顕/ナレーター:井上 宝、志摩 淳。
まず注意点を先に。介護の現実や死を扱う内容なので、苦手な人は無理しないほうがいいと思います。
ただ、10年以上前(2013年)に刊行された作品なのに、いま聴いても切り口が新鮮で、どんどん引き込まれました。
そういえば2023年に映画化もされたようです(私は未視聴)。
この記事では、映画の話は一言に留めて、「作業しながら聴けたか」を軸にまとめます。
■ 今日の耳読シーン
在宅で図面作業をしながら聴きました。内容は重いのに、言葉が平易で、話のつながりがスムーズ。
「難しくて置いていかれる」タイプではなく、耳だけでも筋を追いやすい印象です。
ただしテーマがテーマなので、気持ちが沈む日は避けたほうが安全。
作業は進むのに、心だけがずしんと重くなる瞬間がありました。
■ 本の概要
『ロスト・ケア』は、介護や家族、そして“生きる意味”に踏み込んでいく社会派ミステリーです。
誰にでも起こりうる環境の話として迫ってきて、聴きながら自分の生活や将来に想像が伸びてしまうタイプの作品でした。
なお、しばしば「(ある事件)をモチーフにしているのでは」と言われがちですが、本作の刊行は2013年で、時系列は逆です。
事件をなぞるというより、もっと前から同じ不安が社会の底にあったことを突きつけられる感覚がありました。
■ ナレーションの印象
ナレーターは男女二人体制。男性ナレーター(井上 宝さん)はとても良く、場面の空気をまっすぐ運んでくれました。
一方で、女性ナレーター(志摩 淳さん)は、個人的に少し“妙な色気”が乗る感じがあって苦手でした。もっとすっきり読んでほしい、というのが正直な感想です。
ただ、作品そのものの引力が強いので、多少の好みを超えて最後まで聴けました。
■ 作業との相性
作業相性(体感):○(重いテーマでも、言葉が平易で流れは追いやすい)
- 変換・資料整理など:◎ 話のつながりがスムーズで手が進む
- チェック修正など:○ 集中は保てるが、重い場面で気持ちが引っぱられる
- 割付・詳細検討など:△ 判断が多い日は、内容が刺さって一時停止が増えやすい
区切りは章よりも、仕事の電話を受けたときや集中して考えたいときに一時停止して調整するのが現実的でした。
■ 心に残ったポイント
- テーマは重いのに、言葉が難しくなく、耳だけでも追いやすい
- 誰しも抱える不安を刺激してきて、「自分の話」に寄ってくる
- 10年以上前の作品なのに、いま聴いても切り口が新鮮
- 「意思疎通ができない人間は意味がない」と切り捨てる人ほど、心を通わせることに満たされていないように感じた
- 読後(聴後)に、正解のない問いだけが残る
■ こんな人におすすめ
- 社会派ミステリーが好きで、現実に近いテーマを避けない人
- 介護や家族の問題を、いつかの自分ごととして考えてみたい人
- 重いテーマでも、難しい言葉が少ない作品を探している人
- “正しさ”よりも、“人間の揺れ”を描く物語が刺さる人
※注意:介護・死・家族のしんどさが苦手な人、気持ちが沈みやすい時期の人は、無理に選ばないほうがいいと思います。
■ 総評
『ロスト・ケア』は、重いテーマを真正面から扱いながら、耳だけでも置いていかれにくい作品でした。
作業は進む。でも内容が刺さる。だから、聴いたあとに残るのは“気持ちの揺れ”のほうでした。
誰にでも起こりうる環境の話として考えさせられ、簡単に割り切れない。
その不安ごと引き受ける強さがある人には、忘れがたい一作になると思います。