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『ラスプーチンの庭』Audibleレビュー|ブログに書いていたから伏線に気づけた

■ 結論

『ラスプーチンの庭』(中山七里・朗読:杉村憲司)は、民間医療団体が家族を取り込む構造を描いた社会派警察ミステリです。第1章は重くつらい場面が続きますが、団体の実態が見えてくる中盤からぐっと引き込まれます。どんでん返しは強く、第1章に伏線が仕込まれていることに聴き終えてから気づく一作です。

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■ 作業との相性

施工図の作業中に聴きました。1.3倍速で聴いています。女性キャラクターのシーンが多く、早めの速度が合っていました。第1章は父親の病で家族が転落していく描写が続き、つらくて手が止まりそうになる場面がありましたが、民間医療団体の構図が見えてくる中盤からは自然と耳が引っ張られました。

変換・資料整理など軽い作業では、中盤以降は展開が一定のテンポで進むため作業を止めずに聴き続けられます。第1章さえ乗り越えれば流れに乗れます。修正・割付検討など中程度の作業では、第1章の家族が転落していく描写で気持ちが持っていかれる場面がありましたが、感情的なシーンが過ぎれば作業に戻れました。詳細・納まり検討など集中が必要な作業と、民間医療団体の説法シーンや音量変化が大きい場面が重なると集中が途切れることがありました。

■ Audibleで聴く

再生時間は9時間8分、Audible配信日は2024年12月13日です。杉村憲司の安定した朗読が民間医療団体の重いテーマを作業中の温度で届けてくれるため、Audible版が向いています。シリーズ第6作まで同じナレーターが続いており、声のイメージが定着した状態で安心して聴き始められます。

Audibleでは本作の配信を確認できます。無料体験の条件は変わることがあるため、最新の内容は登録画面でご確認ください。

■ 作品について

中山七里著『ラスプーチンの庭』は、刑事犬養隼人シリーズの第6作です。KADOKAWA公式でも「大人気社会派警察医療ミステリ第6弾」と明記されています。ジャンルは社会派警察医療ミステリ。

犬養の娘・沙耶香の入院仲間だった少年・庄野祐樹が自宅療養に切り替え、1ヶ月後に急死します。告別式に参列した犬養は遺体に奇妙な痣があることに気づきます。さらに翌月、同じような痣を持つ女性の自殺遺体が発見されます。検視では事件性なしと判断されましたが、納得できない犬養が独自に捜査を進めると、民間医療団体「ナチュラリー」に行き当たります。

タイトルの「ラスプーチン」は帝政ロシア末期に皇帝一家へ強い影響力を持ったとされる怪僧の名前です。民間医療団体の主宰者がそのラスプーチンに見立てられています。KADOKAWA公式は本作を「これはカルトか、民間医療か」という言葉で紹介しており、医療不信と信仰の境界が物語の核にあります。

■ 主な登場人物

  • 犬養隼人(いぬかい はやと):警視庁捜査一課の刑事。事件性なしと判断された死に疑問を抱き、独自に捜査を進める。本作では父親としての側面がこれまで以上に前面に出る。
  • 犬養沙耶香(いぬかい さやか):犬養の娘。入院中に庄野祐樹と知り合う。本作では犬養の家庭と事件を直接つなぐ起点になる人物。
  • 庄野祐樹(しょうの ゆうき):沙耶香の入院仲間の少年。自宅療養へ切り替えた後に急死し、遺体の奇妙な痣が事件の発端となる。
  • ナチュラリーの主宰者:民間医療団体を主宰する謎の人物。正体と団体設立の目的が事件の核心に関わる。

■ ブログに書いていたから、伏線に気づけた

本作のどんでん返しは、最初は現実離れして唐突に感じました。犯人の長い年月をかけた復讐が明かされる展開で、「そんな都合のいい話か」と思いながら聴き終えました。

ところが、ブログに記録を書き起こすために第1章を振り返ったとき、伏線が仕込まれていたことに気づきました。聴いている最中は重くてつらいだけだった場面が、どんでん返しを経て振り返ると意味を持っていた。ただ聴いているだけでは見落としていたと思います。

記録することで作品の見方が変わる体験でした。作業しながら耳読して、気になったことをブログに残しておく。その積み重ねが、本作では特に有効でした。Audibleで聴くだけでなく、記録と組み合わせることで作品が深くなると感じた一作です。

■ 前作は貧困の匂い、本作は死の匂い

前作『カインの傲慢』を聴き終えたとき、印象として残ったのは「貧困の匂い」という言葉でした。本作を聴き終えて残ったのは「死の匂い」でした。

第1章から重くのしかかる空気が最後まで続きます。父親の病で家族が転落していく様子、民間療法に縋る人々、自らの手を汚さず家族にやらせる団体の構図。フィクションとして聴いていながら、現実の事件と重なる部分があって他人事に思えない場面がありました。

シリーズを通じて、匂いで作品を記憶するようになっていました。嗅覚的な表現で作品を記憶するのはAudibleで耳から入ってくる体験ならではかもしれません。第1作は臓器移植の重さ、第2作は良心の呵責、第3作は大阪の緊迫感、第4作は従妹の記憶、第5作は貧困の匂い、そして本作は死の匂いです。

■ 読む順番/シリーズ情報

刑事犬養隼人シリーズは現在7作が配信されています。各作品は独立して楽しめますが、第1作から順に聴くと世界観が掴みやすくなります。本作は犬養の娘・沙耶香が事件の起点になるため、シリーズを追ってきた読者ほど重みが増します。

  1. 切り裂きジャックの告白
  2. 七色の毒
  3. ハーメルンの誘拐魔
  4. ドクター・デスの遺産
  5. カインの傲慢
  6. ラスプーチンの庭 ← 本作
  7. ドクター・デスの再臨

シリーズ全作の順番・再生時間・作業との相性をまとめた記事もあります。
→ 刑事犬養隼人シリーズ Audible全作まとめ

■ 文字でも読みたい人へ

文庫版は2023年8月24日発売、KADOKAWA刊、320ページです。民間療法と標準治療をめぐる議論を整理しながら追いたい人や、第1章の伏線を確認しながら読み進めたい人は、紙やKindleの方が向いているかもしれません。

■ こんな人に

民間医療や保険外治療の問題に関心がある人、シリーズを第1作から順に追っている人、どんでん返しを楽しみたい人に向いています。伏線が第1章に仕込まれており、聴き終えた後に振り返る楽しさがある一作でした。

一方、病気や家族の不幸をめぐる描写が苦手な人には第1章がつらくなる場面があります。民間療法への不信感が強い人は犯人の動機に感情移入しにくいかもしれません。場面によって音量変化が大きいナレーションが気になる人にも注意が必要です。

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