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『ヒートアップ』Audibleレビュー|作業を止めずに聴き通せる。麻薬取締官とヤクザが組む異色のバディミステリ

結論:中山七里『ヒートアップ』(朗読:茶川亜郎)は、麻薬取締官とヤクザが異色のバディを組む麻薬取締ミステリです。声のトーンが落ち着いており作業との相性は良好で、淡々と聴き進められます。前作『魔女は甦る』を聴いていなくても楽しめますが、先に聴いておくと背景をより深く楽しめます。

■ はじめに

中山七里著『ヒートアップ』は、『魔女は甦る』と同じ麻薬「ヒート」を軸にした関連作です。朗読は茶川亜郎さんが担当し、再生時間は10時間20分です。著者は続編としていませんが、前作の2か月後の出来事が描かれています。

前作に登場した槇畑・毬村・渡瀬・古手川は本作には登場しません。主人公は厚労省所属の麻薬取締官・七尾究一郎で、ヤクザの山崎岳海との異色のバディが物語の軸になっています。前作を聴いていなくても完結しますが、先に聴いておくと世界観の背景をより深く楽しめます。

■ 今日の耳読シーン

施工図の作業中に聴きました。1.3倍速で聴いています。ナレーターの声のトーンが落ち着いており、淡々と話が進む構成と合わさって、作業を止めずに聴き続けられる感覚がありました。七尾と山崎の二人を軸に話が進むため、場面が変わっても置いていかれる感覚がありませんでした。

■ 『ヒートアップ』のあらすじ

麻薬「ヒート」が闇市場に流出し、それが原因で起きた抗争の捜査を進めていた厚労省所属の麻薬取締官・七尾究一郎。ある日、殺人事件に使われた鉄パイプから七尾の指紋が検出されます。誰が七尾を嵌めたのか。捜査を進める中、宏龍会の渉外委員長・山崎岳海と異色のバディを組むことになります。

おとり捜査も許されるエリート麻薬取締官と、情報通でただの悪人ではないヤクザという組み合わせが物語の面白さの核心です。終盤は自衛隊・在日米軍も絡む冒険活劇の色が強くなり、前作とは異なるスケール感の展開になります。伏線よりも展開のスピード感が前面に出た構成で、最後まで展開が途切れません。

■ 主な登場人物

  • 七尾究一郎:厚労省所属の麻薬取締官。おとり捜査も許されるエリート捜査官で本作の主人公です。殺人事件に嵌められながらも真実を追い続ける粘り強さが、物語を最後まで引っ張ります。
  • 山崎岳海:宏龍会の渉外委員長。情報通でただの悪人ではなく、家族には一般企業のサラリーマンとして振る舞っているという設定が面白いキャラクターです。御子柴礼司シリーズにも登場します。

■ ナレーションの印象

茶川亜郎さんの声は年配の男性を思わせる落ち着いた語り口で、起伏が少なく淡々と聴けます。本作は男性キャラクター中心の構成のため声のトーンが単調になりがちですが、それが作業中の聴きやすさにつながっています。物語への没入という点では物足りなさを感じる場面もありましたが、10時間を通して安定して聴き続けられました。1.3倍速でも問題なく聴けました。

山崎の声は御子柴礼司シリーズの演じ方の方が好みでしたが、本作でも十分に存在感があります。

■ 作業との相性

※記号は「作業中の聴きやすさ」の目安です(作品の面白さ評価ではありません)。

  • 変換・資料整理など:◎ 声のトーンが落ち着いており、作業を止めずに聴き続けられます。七尾と山崎を中心に話が進むため離脱しにくく、作業の手が止まることはほぼありませんでした。
  • 修正・割付検討など:◎ 内容を追いながら作業できます。起伏が少ないナレーションが作業リズムを崩しにくくしています。
  • 詳細・納まり検討など:○ 終盤の自衛隊・米軍が絡むドタバタした展開では少し気が散ることがあります。集中が必要な作業と重なると手が止まることがあります。

■ 気になったところ

  • ヒートに汚染された犬の扱い:終盤、ヒートに汚染された犬が都合よく使われる場面があります。物語のスケール感との対比は面白いですが、ミステリー要素としては少し軽くなる印象がありました。
  • 御子柴礼司の登場:最後に御子柴礼司が登場します。中山七里作品を横断して聴いている読者には嬉しいサービスです。

■ こんな人には合わない

  • どんでん返しの鮮烈な切れ味を期待している人。本作は伏線よりも展開のスピード感が前面に出ており、中山七里作品の中では切れ味は控えめです。
  • 前作『魔女は甦る』の登場人物のその後が気になっている人。槇畑・毬村・渡瀬・古手川は本作には登場しません。
  • 女性キャラクターが活躍する作品を聴きたい人。本作は男性中心の構成で、女性キャラクターの出番は限られています。

■ 心に残ったポイント

  • 山崎のキャラクター
    情報通でただの悪人ではなく、家族には一般企業のサラリーマンとして振る舞っているというギャップが面白かったです。御子柴礼司シリーズでも登場するキャラクターで、中山七里作品を横断して追っている読者には馴染みのある存在です。
  • 宮條の声の出演
    前作の宮條が声だけ登場する場面がありました。生きていてうれしくなりましたが、物語の流れとは直接関係がないため、必ずしも前作を聴いてからでなくても楽しめます。
  • 終盤のスケール感の対比
    自衛隊・在日米軍が絡む大きな展開と、そこら辺にいる犬というドタバタした要素の対比が面白かったです。冒険活劇としてのスケール感が一気に広がる終盤でした。

■ こんな人におすすめ

  • 麻薬取締官(マトリ)を主人公にしたミステリが好きな人。おとり捜査も許されるエリート捜査官という設定が、作品に独特の緊迫感を与えています。
  • バディものが好きな人。麻薬取締官とヤクザという異色の組み合わせが、物語の軸として最後まで機能しています。
  • 作業中に安定して聴き通したい人。声のトーンが落ち着いており、作業との相性は全体的に良好です。

■ 総評

『ヒートアップ』は、麻薬取締官とヤクザという異色のバディが軸の冒険活劇寄りのミステリです。ナレーターの落ち着いた語り口と淡々とした構成が作業との相性を高めており、10時間を通して安定して聴き続けられます。山崎のキャラクターと終盤のスケール感が楽しめる一作で、前作『魔女は甦る』を聴いていなくても完結しますが、先に聴いておくと背景をより深く楽しめます。

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